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連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(7)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
〜ひたむきにひとつひとつ心をこめて〜
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第二章 ひたむきに 泥にまみれ』

 連載 第7回!本日から第二章

   ●壮絶な東大ラグビー部の練習とはいったい?

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まだ三洋電機に入社する前のことだ。

泥にまみれてのひたむきな努力が実る瞬間を目撃した。
大学院在学中3年目の9月、私は観客席で絶叫していた。

大芝主将率いる東大ラグビー部が日本体育大学に勝ったのである。
涙があふれた。信じられなかった。本当に嬉しかった。

次の週、私は駒場の東大グラウンドに立っていた。
大学院生として東大ラグビー部に復帰したのだ。

以前から大芝に「祐造さん。一緒にラグビーやりましょうよ。
俺達には祐造さんが必要なんすよ」と甘い言葉で口説かれていたのだが、

修士論文の研究で多忙だったため断り続けていた。

しかし、「日体大に勝っちゃうチームってどんなチームなんだろう」という
好奇心と「こんなすごい奴らが必要だと言ってくれるのなら、やってみよう。

三洋電機でプレーする前に体作らなくちゃいけないしな!」と言い聞かせて、
修士論文のためにやらなければいけないことは文字通り山積していたが、
私はラグビー部に復帰してしまった。

「日体大に勝っちゃうチームって、どんなチームなんだ」
答えはすぐにでた。

控え選手中心のBチームの試合が組まれている日だった。
レギュラー中心のAチームがコンビネーションの練習をしていた。

地域を想定してBKが球を動かし、FWがそれをサポートする練習だ。
私はBチームの試合メンバーだったので、その練習を外から眺めていた。

水上コーチの要請で早大OBの橋本氏が駒場に来てくれ、コーチして下さっていた。
私はその練習に戦慄した。

「おぇ。おぇー」

コンビの最中にFWの選手が吐いていた。

「22mスクラム!」選手達は指定されたポイントまで、
よれよれの、しかし精一杯のジョギングで途中何度か吐きながら走っていた。

橋本コーチの檄が飛んだ。

「いいかFW。『頑張る』っていうのはよー、最初の10mダッシュして
最後の10mもダッシュするっていうことなんだよ。

ポイントからポイントの移動はそういう気持ちで走るんだよ。
それが、FWが『頑張る』ってことなんだよ。

BKが最後トライしたときにはFW全員が塊で
インゴールになだれ込むぐらい『頑張って』走ってみろ!」

そしてまたコンビが再開される。

BKは丁寧にボールをつなぎ、FWはひたむきにラックからラックまで
『頑張って』走っていた。

ウィングの藤井がインゴールにトライを決めると、
その周りに少し遅れてFWの塊が倒れこむようにして
ばたばたとなだれ込んだ。

そしてまたインゴールで誰かが吐いた。

「おぇ。おぇー」

信じられない位、素直でひたむきな奴らだ。
コーチの要求通りに『頑張って』いる。

すると、FWリーダーの宋選手が、リバースした直後の口を拭いながら、
泣きながら狂ったように叫んだ。

「おい!お前らー!なんで俺のいうことはロクにきかねぇのに
コーチのいうことはそんなにきくんだよー。
そうじゃねえだろー!練習はやらされてやるもんじゃねぇだろー!」

(コーチの方を睨みつけて)
「あいつがなんだっつんだよー」

「うるせぇ!」と橋本コーチが宋を蹴り倒した。

壮絶だ。
背中にヒヤリと汗が流れた。

こんなひたむきなFW達にサポートされたら、BKは申し訳なくてミスなんか出来ない。
そりゃもう、死に物狂いで球を活かすようになるはずだ。


次回へ続く・・・

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