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連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(9)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
~ひたむきにひとつひとつ心をこめて~
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第二章 ひたむきに 泥にまみれ』

    連載 第9回!

     ●村田にとってのベストゲーム!

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風呂といえばこんなこともあった。

私が部室の湯船で練習の疲れを癒していると、
なにやら手の平サイズの泥太もものが
前面にべったりはりついた状態で湯船に
ザブザブ入ってくる奴がいる。

4年生のFWの関口だ。

猫背でみぞおちの辺りが凹んでいるため、
ヘコミさんというあだ名がついている。

「おいヘコミ。お前、すんげー泥ついてるぞ。そこ洗ったん?」

「あ。祐造さん。これ落ちないんすよ。
俺ジャンパーだから、リフティングのために糊スプレー塗ってるんすよ。
リフターの手がすべんないように。
練習のたびに塗るから、そのたびに泥がついて何層にも重なってて、
洗ってもこすっても全然落ちないんすよ。これ」

私は呆れ顔を覗き込んだ。

「マジ?でも、お前それじゃ彼女に怒られるだろ。布団汚れるしさ」

「もう諦めましたよ。ラインアウトでボールをとるために
一生俺はこの泥の十字架を背負って生きていくんすよ」
と関口は苦笑いを浮かべた。

文字通り泥臭い奴がいるもんだなと、私は心の中でまたニヤリと笑った。

信じられないくらい泥臭くてひたむきなチーム。
狂気にも似た「ひたむきさ」が充満していた。

それでいて、宋が練習中に仲間に要求していたように、
キツイ練習はコーチに「やらされる」のではなく、
自分から「やるんだ」そして「俺達はひたむきに体を張るんだ」
という強い意志がチームにあった。

そういうチームだった。

チームはターゲットにしていた筑波大には敗れたもの、
青山学院大に勝利を挙げ、創部以来の快挙を成し遂げた。

青学戦には私も出た。今でも私のベストゲームだ。
思い出すだけで嬉しい気持ちになる。

チームメイトの後輩達に今でも深く感謝している。

「どうもありがとう」

2000年の東大ラグビー部の対抗戦は、
人々から快挙と呼ばれる成績で終了した。

しかし、快挙の影に隠れているが忘れてはいけない試合がある。
最終戦の京都大学との定期戦には、敗けているのだ。

私はその試合にも出た。負ける気はしなかったのだが負けた。
快挙の後でチームにどこかフワフワした気持ちがあったのかもしれない。

試合後酒を飲みながら、宋が苦笑いで言った。

「やっぱ、俺たち気持ちで油断してたんすかね。満足しちゃってたって言うか。
東大ラグビー部がね、勝ちたいっていう気持ちが相手より弱かったら、
気持ちで負けてたら、どこにも勝てる訳ないっすよね。
あぁでも、それがわかっただけで今日の試合は意味があるな」

私も多くのことをあのチームから学ばせてもらった。

いいチームだった。


次回へ続く・・・

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