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2008年08月 アーカイブ

2008年08月06日

連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(10)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
~ひたむきにひとつひとつ心をこめて~
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第三章 苦闘するジャパンに見えた光』

    連載 第10回!

     ●信頼と責任のディフェンス

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2003年春。

ワールドカップイヤーのプレシーズン。
日本代表は苦難の道を歩んだ。

春の豪州合宿は1勝3敗。

スーパー12のBチームクラスが相手だった。
アタックは健闘してトライを奪うことはできるが、
ディフェンスがずたずたである。

吹っ飛ばされて抜かれる。
スピードで振り切られる。

とにかく1対1が止まらない。

お互いに信頼感がないから、仲間を信じられない人間が
自分勝手に相手に詰めたりして組織ディフェンスも機能しない。

テストマッチも連戦連敗だった。
アメリカ代表に敵地で惨敗。

2002年には快勝しているロシア代表にもホームの秩父宮で惨敗。

メディアはスタッフの批判を繰り返し、向井監督の退陣の噂もでたが、
現場はなんとかしようと必死だった。

韓国代表には勝ったが、豪州A代表にも連敗。
イングランドA代表にも連敗した。

最大の課題は1対1のタックルだった。
姿勢が高い。

日本代表の選手は国内では強いチームの選手達ばかりだ。
しかも大型な選手や攻撃が売りの選手が多い。

彼らの多くは、ボールを殺すためにと高い姿勢で
胸のあたりにヒットするタックルが癖になっている。

確かに社会人リーグではそれでも通用するのかもしれない。
だが外国人の一流選手には通用しない。

簡単に吹っ飛ばされる。
次はびびって腰が引けるからスピードで振り切られる。

組織で追い詰めて人数的に余ってない状況に追い込んでも、
最後にタックルする者が1対1で抜かれたら組織防御も崩壊する。

味方が信頼できなくなってみんな一人よがりのプレーをし始める。
一人一人の姿勢の高さが負の悪循環、ネガティブスパイラルを生み出していた。

どれだけ自分のチームが選択したシステムを信じられるか。
どれだけシステムの中で、自分の役割に対し責任を果たすことができるか。
どれだけ仲間の信頼に応えられるか。どれだけ仲間を信頼できるか。

信頼と責任が強いディフェンスを生む。

ボールの所有権を奪うことがディフェンスの目的である。

ラグビーは倒れたらボールを手放さなくてはいけない。
だからタックルは相手を倒さなくてはならない。

相手よりも自分の方が強くて胸の高さにタックルしても
相手を倒せるのならばそうした方がいい。

ボールのコントロールが奪えるからだ。

しかし、ワールドカップを戦う日本代表選手の場合、
相手の外国人選手はとても強く胸の高さにタックルしても倒せない。

倒すためには膝から腰にかけての低い位置に入り、
しっかりバインドして相手の足の回転を止めなければならない。

それができなければ、ボールがフリーになる。
ボールをオフロードパスでつながれる可能性が高くなる。

しかし、吹っ飛ばされて相手に突破されるよりよっぽどマシだ。
何度も吹っ飛ばされて抜かれたら、仲間に信頼してもらえなくなるからだ。


  次回へ続く・・・・

2008年08月18日

オリンピックのみかた

チームワークエンジニアのムラタぐです。

オリンピック観戦とても楽しいですね。

スポーツ(ラグビー)のようにチームを作ろう
スポーツ(ラグビー)のように働こう

という合言葉で、チームワークとコミュニケーションと
パフォーマンスの発揮の心理学などの研修講師をしている私としては、
オリンピックはとても学びがあって興味深いです。

勝つ人と負ける人のメンタルの違い
負けても胸を張って感謝できる人と
泣き崩れる人の違い

彼らが

どんな人生を生きて
どんな人たちに支えられて

どんな準備をして4年に一度の舞台で
どんな結果がでて

どんな気持ちでそれをうけとめて
どんな表情でどんなコメントをするのか

すべてが興味深いです。

この北京オリンピックで気づいたのは、
感謝の言葉を心をこめて発言するチャンピオンが多いことです。

一人では絶対にチャンピオンにはなれないんですね。

自然と感謝できる人には、自然と協力が集まります。

金メダルがとれなくてすげー悔しくても
浜口京子選手や伊調千春選手のように
晴れやかな顔で感謝の言葉を
語れるアスリートはとてもかっこいいと思います。

たとえ銀メダルでも
金と同じと書いて銅メダルでも

メダルなしに終わっても
予選落ちでも

一回戦負けでも
途中棄権でも

オリンピックに出場した選手は、尊敬されるべきです。

勝っても負けても、選手達には胸を張って欲しい。

今ままで支えてくれた人に心から感謝の言葉を伝えてほしい。

そこからまた次の人生の挑戦がはじまるのだと思います。

その姿に私達は勇気をもらいます。

どうもありがとうございます。

今日も皆様に感謝。

心をこめてありがとう。


2008年08月20日

連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(11)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
~ひたむきにひとつひとつ心をこめて~
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第三章 苦闘するジャパンに見えた光』

    連載 第11回!

     ●タックルミスをPowerAnalysisで分析

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日本代表では、ボールを殺す役目は
二人目の選手がやるという約束事を提案した。

一人目は下に入ってボールキャリアを倒す。
二人目がボールの位置にタックルする。

もしくはオフロードパスのコースに体を入れる。
もしくはオフロードパスを受ける相手に
すかさずタックルする。

二人目の仕事の概念を「キルザポップ」
(ポップパスでつながれるのを防ぐ)
と一言で呼ぶことを提案した。

概念を一言で定義してチームで共有しておくと、
練習中や試合中に復唱して確認するのに便利になるからだ。

東大ラグビー部時代に嫌というほどタックル場の砂場で
この「キルザポップ」の練習をしたのを思い出す。

当時はそんな言葉の定義なんかは意識していなかったけれど。

ともかく私が学生の頃やった泥臭い練習が
ジャパンでも繰り返し行われた。

一人目は低く相手を倒す。二人目がボールを殺す。

特にタックルが高くて抜かれることが多かった選手には、
個人的に「PowerAnalysis」を使ってすべての
タックルミスのシーンを見せた。

個人のミスを見せるときは、全体ミーティングで
みんなの前で見せてはいけない。

その選手のプライドをつぶしてしまうからだ。 
ミスのシーンの確認は、マンツーマンで個人的にやるのがいい。

逆にいいシーンを選手に見せたい時は、
みんなの前で見せて賞賛する。

その選手はとてもやる気になるし、他の選手もみんなマネして
同じようにいいプレーをしてくれるようになる。

豪州合宿の試合のグラフを見ると、難波英樹選手のタックル数が
ずば抜けて多いのだが、
「ヒットしたが抜かれる」という項目の数も多かった。

激しくコンタクトしているのだが、姿勢が高くて吹っ飛ばされ
抜かれるシーンがよく出てくる。

まず難波選手を治すのが近道だと思った。


村田
「ほらナンチャン。いいヒットしてんだけどねー。
抜かれているときは全部タックル高いよ―。」


難波
「あー。やっぱ外人にはタックルは下っすかね。」


村田
「そうだよ。ナンチャン、学生時代ガツガツ
低いタックル刺さっていたじゃん。
あれだよ。あれ。俺も帝京と対戦したからよく知ってるよ。」


難波
「あ、知ってる。いたような気がする。こんなのが。
東大っていっぱいいたなー。 低い奴が。
あの頃は自分も低くタックルしてたんですよねー。
社会人になってから高くなっちゃったんすよ。
次、低さを意識しますよ。」


次の試合、春のアメリカ戦から、
難波選手の低いタックルが決まり始めた。

自分の行った分析とそれに基づくコーチングが、
日本代表レベルの選手にもいい影響を与えることが
できると実感してとても嬉しかった。

意識一つでこんなに変われるとは、
さすが日本代表の選手だなと感心した。

同時に意識一つでこんなに変わるってことは、
コーチやスタッフの役目は、なんて重要なのだろうかと
身の引き締まる思いがした。

元々、難波選手は、勇気に溢れて骨惜しみしない
非常にひたむきな選手だ。

結局彼にはワールドカップでは、
フランス戦しかチャンスが回らず私は非常に残念だったが、
春のテストマッチでは、彼の低く激しいタックルが、
何度もチームを勇気付けた。

彼のタックルは、どんな言葉よりも雄弁で説得力があった。

「低くタックルすれば倒せる」

彼に引っ張られて、チームの個人タックルの精度を示すグラフも、
少しずつ少しずつ良くなっていった。


   次回へ続く・・・

2008年08月21日

横浜ベイスタぐ!はじめてのスポーツ体験教室

チームワークエンジニアのムラタぐです。

先日、横浜ベイスターズの主催イベントで
はじめてのスポーツ体験教室!ということで
夏真っ盛りの横浜スタジアムで元気いっぱいの子ども達に
タグラグビーをコーチしてきました。

スポーツって楽しいんだよ!
たくさん友達をつくろう!

ということを伝えるのがイベントの目的でした。

私は、子ども達へのタグラグビー指導では
タグラグビー「を」教えるだけでなく
タグラグビー「で」人と人とのふれあいや大切な心を伝える
体育+心育を心がけています。

社会という大きなチームの中で
個性を発揮して輝くために、
子どもたちにチームワークの大切な心構えの二つを
伝授しました。

人の話を聴くことの大切さ(傾聴の心)と、
相手を大切にすると自分も大切にしてもらえること(敬意の心)です。

コーチとして心がけるのは
まず私が先に子ども達に敬意を払うことです。

私がだしたチャレンジ課題に挑戦できた人
成功した人、よく話が聞けた人には
すかさずお礼を言ってみんなで拍手して賞賛します。

そうするとミラーの法則で
今度は子どもたちが私に敬意をはらって
話を聞いてくれるようになります。

yokohama1.jpg

そして、子ども達に私の説明を目と耳と心で傾聴してもらいます。
目でも聴けるようになるべく見本を見せながら説明します。

yokohama2.jpg

そんな感じで
友達と協力してふれあうゲームをたくさんやりました。

yokohama3.jpg

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最後は、チームでトライを目指して走りました。
ボールをもって前に進むことは
人生におけるチャレンジのメタファーなのだ!

yokohama5.jpg

ガンバレ!ニッポンの子ども達!

というわけで心から彼ら彼女たちを応援する気持ちで
スポーツの楽しさ、人とのふれあいのあたたかみ
傾聴の心と敬意の心を伝えました。

どうもありがとう!

タグラグビーのプログラムは
全体の最後のプログラムだったので
私達は、誰もいなくなった横浜スタジアムを満喫しました。

スタッフのおーち選手とハイパントキャッチの練習をしたり

yokohama6.jpg

プロ野球選手のマネをして
大きな鏡の前でエアバッティング練習をしたり

yokohama7.jpg

yokohama8.jpg

外野フェンスに激突しながらホームランボールを
キャッチする練習をしました。写真がなくて残念。

協力してくれたオレンジ隊(スタッフ)のみんなと記念撮影。

yokohama9.jpg

友達って本当にありがたいです。

私が感じているこの事実が
タグラグビーを通じて子ども達に伝わっていると嬉しいです。

心をこめてありがとう。
今日も皆様に感謝。

2008年08月27日

連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(12)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
~ひたむきにひとつひとつ心をこめて~
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第三章 苦闘するジャパンに見えた光』

    連載 第12回!

     ●ゲームプラン「ビルディングビーバーズ」

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日本代表の二つめの課題は、
ターンオーバーからの失点であった。

攻撃中にターンオーバーを
食らってトライされるケースが非常に多い。

リードされていて時間がなくなってくると、
焦りが生まれてくる。

やけくそになって自陣から攻め始めるので
余計にターンオーバーからトライされるケースが増える。

それで実力以上の大差で負ける。

「敗者のネガティブスパイラル」だ。

日本代表の春のテストマッチは、
このパターンでほぼすべてのゲームに惨敗した。

例外は、イングランドA代表との第一試合であった。

前半から力ずくで攻めてくるイングランドA代表に対して、
日本代表は粘り強いディフェンスで凌いだ。

相手のラックからターンオーバーしたボールを
元木由記雄選手がスペースにパスして、

広瀬佳司選手が裏へキック、大畑大介選手が
それを拾ってそのままトライした。

日本代表は、ディフェンスの粘りからボールを奪い、
ターンオーバー時にできる一瞬のチャンスを
ものにしてトライを奪ったのだ。

前半42分まで10対6でリードしていた。

その試合も結局負けてしまったが
スタッフの我々も選手も一番手応えを感じた試合だった。

日本代表チームが、残り20分をリードして迎えることができれば、
焦りだすのは敵のチームだ。

最低でも僅差で喰らいついた状態でいたい。

点差が開くと「敗者のネガティブスパイラル」にはまってしまう。

日本代表は強い相手にも僅差で喰らいついていって、
まず試合を造ることが必要なのだということがはっきりとわかった。

私は、「ビルディングビーバーズ」というゲームプランを考えた。

ビルディングビーバーズとは、後半の勝負どころまで
「試合を造る」ためのゲームプランだ。

ダムを造るビーバーのように勝利への土台を築く。

ビルディングビーバーズのポイントは以下。

○タックルが得意な選手を先発で起用する。
ディフェンス重視。

○リスクを減らす。
○キックを使って敵陣に行く。

○陣地を取るためにキックオフとドロップアウト重視。
○PKは、射程距離圏内ならばすべて狙う。

○中盤から敵陣までは3次程度の
ショートフェイズでトライを狙う。

○停滞したラックが出来たら、ドロップゴールもしくは
インゴールにハイパントかグラバーキック。

必要以上の連続攻撃は避ける。

なぜなら、過剰な連続攻撃はターンオーバーされて一気にトライ、
もしくは陣地を大きく返されるリスクがあるからだ。

DGが成功すれば3点。失敗しても相手のドロップアウトだから、
また敵陣で攻撃を開始できる可能性が高い。

インゴールへのキックは味方が押さえれば5点。
相手が押さえたとしても相手のドロップアウトだからリスクは低い。

ディフェンスで粘ってターンオーバーからトライを狙う。敵陣にへばりつく。
時間を潰す。リスクを減らす。PGとDGで細かく加点していく。

ラグビーはある意味陣取りゲームだ。

陣地を確保していくことが、もっとも失点のリスクを抑え
得点のチャンスを広げていく。

15人制のラグビーは、こちらが加点すると相手のキックオフで
試合が再開されるルールになっている。

そのため、得点したチームは必ず自陣に戻らされて、
失点したチームにしばらくチャンスが訪れる仕組みになっているのだ。

ゲームが競った展開になるようにルールが考え抜かれているのである。
だからこそ、加点した後のキックオフの受けは、非常に重要なセットプレイになる。

このプランをどう考えるか。

スタッフ会議に提案する前に選手の意見を探ってみた。
前回ワールドカップに出場している大久保直哉選手に聞いてみた。

村田  
「~というようなプランなんだけど。どう思う?直弥?」

大久保 
「あー。うーん。確かに。つまんないラグビーになるかもしんないけど。
それしか勝つ方法がない気がしますね。」

村田   
「そうだろ。でもワールドカップで勝てば全然つまんなくないよ。
最高に面白いよ。日本中ひっくりかえるよ。これいけそうじゃない?」

大久保 
「うん。いけそう。でもどれだけそれを共通イメージとしてチームで共有して、
徹底して実行できるかが問題なんですよ。」

村田  
「うん。そうだね。そのお膳立てをするのがスタッフの仕事だよね。
向井さんに提案してみるよ。」

気をよくした私は広瀬佳司選手にも相談した。

村田  
「かくかくしかじか。どう思いますか?広瀬さん。」

広瀬  
「それがチームの作戦として監督さんから提示されれば、
その通り僕は動きますよ。」

アンドリュー・ミラー選手にも相談した。

村田  
「かくかくしかじか。どう?アンディ?」

アンディ 
「君の言いたいことはよく分かったけど、僕の考えは完全に正反対だな。」

村田   
「え?どういうこと?」

アンディ
「相手はスコットランドだろ?キックを使ったら相手にとってはイージーだよ。
オーストラリアは暑いんだ。
あいつらが疲れ果てるようにずっとボールを継続して連続攻撃するべきだよ。」

村田
「でも、それじゃこっちが先に疲れちゃうよ。
あいつらのほうが個人はデカくて強いんだから。
ジャパンはディフェンスではコンタクトは避けられない。
だから体張らなきゃいけないけど、攻撃ではキックで敵陣にへばりついて、
PGとDGで点を稼いでコンタクトを避けるべきなんじゃないかな。」

アンディ
「そうかもしんないけど。とにかく私の意見は君の考えとは正反対だ。」

村田  
「……」

日本代表の司令塔アンディと考えが正反対ではどうにもならない。

私はへこんだ。

がっくりきた。


次回へ続く・・・