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連載 ラグビーワールドカップ奮闘記(11)

「ラグビーワールドカップ奮闘記」
〜ひたむきにひとつひとつ心をこめて〜
元ラグビー日本代表テクニカルスタッフ 村田祐造

『第三章 苦闘するジャパンに見えた光』

    連載 第11回!

     ●タックルミスをPowerAnalysisで分析

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日本代表では、ボールを殺す役目は
二人目の選手がやるという約束事を提案した。

一人目は下に入ってボールキャリアを倒す。
二人目がボールの位置にタックルする。

もしくはオフロードパスのコースに体を入れる。
もしくはオフロードパスを受ける相手に
すかさずタックルする。

二人目の仕事の概念を「キルザポップ」
(ポップパスでつながれるのを防ぐ)
と一言で呼ぶことを提案した。

概念を一言で定義してチームで共有しておくと、
練習中や試合中に復唱して確認するのに便利になるからだ。

東大ラグビー部時代に嫌というほどタックル場の砂場で
この「キルザポップ」の練習をしたのを思い出す。

当時はそんな言葉の定義なんかは意識していなかったけれど。

ともかく私が学生の頃やった泥臭い練習が
ジャパンでも繰り返し行われた。

一人目は低く相手を倒す。二人目がボールを殺す。

特にタックルが高くて抜かれることが多かった選手には、
個人的に「PowerAnalysis」を使ってすべての
タックルミスのシーンを見せた。

個人のミスを見せるときは、全体ミーティングで
みんなの前で見せてはいけない。

その選手のプライドをつぶしてしまうからだ。 
ミスのシーンの確認は、マンツーマンで個人的にやるのがいい。

逆にいいシーンを選手に見せたい時は、
みんなの前で見せて賞賛する。

その選手はとてもやる気になるし、他の選手もみんなマネして
同じようにいいプレーをしてくれるようになる。

豪州合宿の試合のグラフを見ると、難波英樹選手のタックル数が
ずば抜けて多いのだが、
「ヒットしたが抜かれる」という項目の数も多かった。

激しくコンタクトしているのだが、姿勢が高くて吹っ飛ばされ
抜かれるシーンがよく出てくる。

まず難波選手を治すのが近道だと思った。


村田
「ほらナンチャン。いいヒットしてんだけどねー。
抜かれているときは全部タックル高いよ—。」


難波
「あー。やっぱ外人にはタックルは下っすかね。」


村田
「そうだよ。ナンチャン、学生時代ガツガツ
低いタックル刺さっていたじゃん。
あれだよ。あれ。俺も帝京と対戦したからよく知ってるよ。」


難波
「あ、知ってる。いたような気がする。こんなのが。
東大っていっぱいいたなー。 低い奴が。
あの頃は自分も低くタックルしてたんですよねー。
社会人になってから高くなっちゃったんすよ。
次、低さを意識しますよ。」


次の試合、春のアメリカ戦から、
難波選手の低いタックルが決まり始めた。

自分の行った分析とそれに基づくコーチングが、
日本代表レベルの選手にもいい影響を与えることが
できると実感してとても嬉しかった。

意識一つでこんなに変われるとは、
さすが日本代表の選手だなと感心した。

同時に意識一つでこんなに変わるってことは、
コーチやスタッフの役目は、なんて重要なのだろうかと
身の引き締まる思いがした。

元々、難波選手は、勇気に溢れて骨惜しみしない
非常にひたむきな選手だ。

結局彼にはワールドカップでは、
フランス戦しかチャンスが回らず私は非常に残念だったが、
春のテストマッチでは、彼の低く激しいタックルが、
何度もチームを勇気付けた。

彼のタックルは、どんな言葉よりも雄弁で説得力があった。

「低くタックルすれば倒せる」

彼に引っ張られて、チームの個人タックルの精度を示すグラフも、
少しずつ少しずつ良くなっていった。


   次回へ続く・・・

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